おへそのおなか


ドアラになりたい7月3週目の日記

日記(7/15~7/21)

7月15日(日)

 電柱にカマキリがいた。

 捕まえてみた。

 怒られた。


 誕生日の人に誕生日プレゼント(豆腐)を渡しに行った。

 最近は面倒くさいけど意識して湯船にゆっくり浸かるようにしている。ドアラになりたいので「恋するお尻」という石けんを買って使っている(ドアラはお尻がぷりぷり)。


7月16日(月)

 暑いので日中は家でぐったりした。海の日らしいので水着を着て湯船に浸かった。ずぼらな自分に洗い逃された塩素の匂いがした。

 夜になってから散歩に出かけた。絶対うその「営業中」の店があった。

 スーパーで鶏レバーなどを買った。ドアラになりたいので店内BGMに合わせて周りの人にバレない程度にリズムを取りながら歩いた(ドアラはリズム感がある)。

 安い徳用ウインナー、フライパンで浅く水を入れて蓋をしてじゅうじゅう蒸し、適当に水を流して表面を焼き、皿に入れてスライスチーズをのせて10秒レンジで温める。レシピ名は「徳用ウインナーの雑魚寝」。シャウエッセンとかそういうちゃんとしたウインナーじゃなくても十分おいしくいただけます。徳用ウインナーの雑な味が大好き。でも、ちゃんとしたウインナーってたまに食べるとびっくりするほどおいしい。


7月17日(火)

 具合が悪かったので休んだ。外気だけでも浴びようと夜になってから買い物に行った。久しぶりにチョコレートが食べたいような気がしたけど、ドアラになりたいので我慢した(ドアラは細い)。

 もうお酒を飲むのをやめようと思って、家にあるお酒を全部流そうと思ったけど、それはできなかった。今ある分はおいしく飲もう。


7月18日(水)

 最近は毎日体重を記録してるんだけど、過去の記録を見ると、去年の9月は今より5キロも少なくてびっくりした。痩せたくてジョキングとかカロリー計算とかしてた時期だ。毎朝、体重の増減に一喜一憂してたな。鶏肉ばっかり茹でてたな。今となってはウインナーがおいしい。これからも健康と幸せの折り合いがつく体重でいよう。

 暑い暑いと転げ回りながらなんとか起き上がって図書館へ。

 ながいひるにライブを観に行った。終わってからみんなでご飯を食べた。楽しい時間だった。ぶとうとマスカットも食べた。


7月19日(木)

 いくら寝ても疲れがとれない。日光を浴びた分のダメージは抜けにくいんだろう。いろいろ言い訳をしながら結局昼まで寝て、歯科医院へ。いつまで行くんだとお思いかもしれません。歯医者に行くのをサボるとこうなるんですよ。口を開けっぱなしにしていたら疲れてあごがぷるぷるしだした。歯医者さんに淡々と「あごが限界を迎えましたね」と言われた。

 疲れたのでご褒美に家電量販店の冷蔵庫の匂いを嗅ぎに行った。写真は、途中のエスカレーターで急にエンカウントした時のもの。家電量販店の冷蔵庫はいい匂いがする。

 私の汗ばんだ足をはさんで右手にカナブンが、左手にセミがすっかり干からびきってひっくり返っていた。神様を外注しようと思う。

 レバニラを作った。丁寧っぽいレシピを見て作ったのでレバーに下味やらなんやらをつけて作ったんだけど、味見するといまひとつだったので、オイスターソースをかけた。おいしくなった。オイスターソースは大体のことを好転させてくれる。おいしいんだけど、レバーとニラともやしは別々に食べた方がおいしい。口の中でいろんな食感がするのがあまり得意ではない。あとレバーって臭み消さない方がおいしいな、と思った。

 お面をかぶって過ごしたい。


7月20日(金)

 朝の内に出かければそんなに暑くないんじゃないかと思って実行してみた。大失敗だった。朝の内に出かけても時間は進む。当たり前だ。というか朝でも暑い。

 喫茶店でご飯を食べた。エビフライが食べたかったのでトンカツとエビフライ定食を注文した。おいしかったんだけど揚げ物を食べるとお腹が痛くなることを忘れていた……。

 命からがら帰宅。日光を浴びたせいかすごい疲れが出て、水シャワーを浴びてそのままけっこう寝た。起きてから、あす尾道に行くので行きたい場所をピックアップしていたら、とても1日じゃ回れないほど行きたいところが見つかった。うーん、なやましい。バス、場合によってはタクシーも躊躇せずに使おうと思う。

 人間みんなそうだと思うけど、本当に暑いのが嫌い。すこしでも打ち解けられるように塩分タブレット、冷えピタ、携帯扇風機などを購入した。果たして効果のほどはいかに。


7月21日(土)

 また別の記事に書きます。

週報最終号 vol.3

 日曜日の夜に更新していきたい需要度外視の週報です。もっと写真とか載せたいけど撮ってないので載せるものがない。デパートの季節に追いつけないまま1年は終わる。

日記(7/8~7/14)

7月8日(日)

 夜更かしが祟って昼過ぎまで寝た。起きてもろもろして友達に会って別れて図書館に行った。

 歯医者さんに勧められたのでデンタルフロスを買った。リステリンも買った。インターネットで「リステリンを大量に飲むと大変危険!」と煽っている記事を見つけた。たくさん飲んだらなんでも死ぬ。

 近頃、夜中に隣人のアラームが止まないことが多い。仕事なのか勉強なのか分からないけど、どうにか起きてほしい。そしてアラームを止めてほしい。寝たい夜があるのだ。


7月9日(月)

 お酒を買いに行った。最近キンミヤ焼酎にハマってるんだけど、600mlビンはすぐになくなるしな、と思って1800mlパックをカゴに入れている時、宝焼酎の4000mlペットを迷いなくカゴに入れているおじちゃんがいた。

 人の手料理が食べたかったので、クックパッドを見ながら自分で自分'に料理を作った。材料を2つ以上使う料理を久しぶりにした。ネギを使えという指示があったけど、ネギとか大葉とかそういうやつは最後まで上手に使えた試しがないのでやめておいた(消しゴムも同じ)。

 眠れなくて海外の映画を観た。開始8分で登場人物の見分けがつかなくなって止めた。


7月10日(火)

 なんとか午前中に起きたのに、そのまま夜になった。自転車で出かけた。暗闇の中をぼーっと漕いでいたら、クモの巣を突き破ってしまった。調べたらクモの巣を作るのには1時間くらいかかるらしい。ごめんよ。またしばらく自転車を漕いでいると、ビルとビルの隙間にクモが浮かんでいた。黒い壁に銀色の種明かしがきらきらと光っていた。

 どこかに寄るつもりもなかったので寝間着と洋服のハーフ&ハーフで出かけてたんだけど、お刺身が食べたい気がしてスーパーに行った。お刺身を買うお金がなかったので魚肉ソーセージを買った。8枚におろしてわさび醤油をつけて食べた。いまいちだった。冷蔵庫で冷やしていたサッポロ黒ラベルを飲んだ。おつまみがないのでわさび醤油をなめた。


7月11日(水)

 やっぱり食べたくてネギを買った。調理バサミでざくざく刻んで納豆に入れて食べた。おいしかった。最後まで使いきるぞ。


7月12日(木)

 2回目の歯科医院。前回の受診での「歯医者さんも恥ずかしい所を見せて」という邪念が通じたのか、治療中ずっと歯医者さんのお腹が鳴っていた。共感性羞恥が煽られて私も一緒に恥ずかしくなった。一度で二度恥ずかしくなるだけだった。次の予約をとる時、受付の方に「木曜日が都合つきやすいですか?」と聞かれて「大体いつでも……」と答えたら「あっ! そうなんですね」と言われた。

 図書館に行って本を読んだ。関心が高まっているので歯についての本を何冊か読んだ。歯科医院で舌に歯型がついていると指摘されて初めて、閉口時に舌と頬の内側を噛む癖があることに気がついた。本で調べてみたら、口を閉じている時は上下の歯が触れ合わず、舌は上顎についているのが正しい状態らしい。それを意識していたら口の中がむずむずして大変だった。「歯を磨いてはいけない」と脅すようなタイトルの本がいくつかあったけど、大体どれも「正しい歯磨きを覚えて実践しましょう」という内容で辟易する。辟易しているところに『昆虫はすごい』というタイトルが目に飛び込んできた。迷わず借りた。

 よく通る道に、コンクリートに擬態できそうな色の猫がいるので、コンクリ猫と呼ぶことにした。

 夕方、町をぶらぶらしていたら、紙飛行機の整備をしながら歩いている下校中の小学生とすれ違った。とっぷり暗くなった頃にどこかから事が済んだ花火の匂いが流れてきた。誰も木なんて見ちゃいない並木道で蝉の声が聞こえた。

 苦しまぎれと自覚しながら飲むお酒……。

 散歩中に見つけたアジダス。


7月13日(金)

 朝起きてそのまま夜になった。

 スターバックスに視察に行った。みんな有意義っぽい時間の使い方をしていた。満足して退店。その後散歩をしていると、急に声をかけられて垂直方向に跳ねた(急に声をかけられるとびっくりして跳ねることがある)。おいしいラーメン屋を聞かれたので教えた。

 家に帰ってお酒を飲みながらYouTubeを見漁った。最近、野球のマスコットキャラクター、特に中日ドラゴンズドアラがかわいくてたまらないのでずっと動画を観ている。特に下半身がたまらない。ぷりぷりのおしり、ぽてっとしたしっぽ、きゅっと締まった細い足首に大きなくつ……。かわいい……。私もドアラになりたい……。

www.youtube.com


7月14日(土)

 暑い。気象庁が日中の外出はなるべく控えるように言っていたので、クーラー(28℃)をつけて部屋でお酒を飲みながらドアラの動画を観た。

 酔っ払ったまま出かけたらまんまと熱中症っぽくなってしまった。目眩がしたのでしゃがんで休み、立ち上がると目の前が真っ暗になったので周りの人に助けて~と言って助けてもらった。そういえばお酒以外水分を摂っていなかったな……。そもそもコーヒーやアルコールは水分補給にならないとのこと。反省。

 納豆と味噌汁にたくさんネギを入れているので、ぶじ使い切ることができた。すごい。

 ドアラになりたいので、行く先々のレジでふかぶかとおじぎをして回った(ドアラは礼儀正しいのだ)。体が硬いのであまり深くおじぎができない。お風呂上がりに柔軟体操をした。

平成とともに夏も最後にしませんか?

 性格がとても悪いのでTwitterで時々「平成最後の夏 エモ」で検索しているんだけど、ありふれた夏の事象を並べて「平成最後の夏エモい」と有り難がっている方々のためにももう夏ごと今年で終わりにしませんか? その方がエモくないですか? どうなんですか? 来年もまた来るなら平成最後の夏なんて何も有り難くないのでは? どうなんですか? ええ?

読書ゆる記録

 感想を書く気力がなかったのでタイトルだけ。本の記録は別でやろうかな……。ところで、虫嫌いじゃないなら『昆虫はすごい』面白かったです。あと『世界で一番美しいイカとタコの図鑑』本当に美しかったです。タコを生で食べたい。

『世界で一番美しいイカとタコの図鑑』 - 峯水亮,窪寺恒己

世界で一番美しいイカとタコの図鑑

世界で一番美しいイカとタコの図鑑

『昆虫はすごい』 - 丸山宗利

昆虫はすごい (光文社新書)

昆虫はすごい (光文社新書)

『恥の烙印』 - スティーブン・P・ヒンショー

恥の烙印―精神的疾病へのスティグマと変化への道標

恥の烙印―精神的疾病へのスティグマと変化への道標

『命の格差は止められるか』 - イチローカワチ

週報最終号 vol.2

 日曜日の夜に更新していきたい需要度外視の週報です。今週は髪を切ったり、歯医者さんに挑んだり、服を着てお風呂に入ったりしてみました。

日記(7/1~7/7)

7月1日(日)

 日付けが変わると急に7月になった。びっくりした。そうか、6月には31日がないのか。驚きのあまり「7月になって驚いた」という旨のツイートをしたら同じく驚いている人がいたんだけど、まあ別に月が変わったからといってなにということもないよな……、という話になった。年末年始は年一回だからかなりびっくりするけど、げつまつげっし(変換できない)は年12回やってくるし、そんなものなんだろうか。カレンダーをべりべりと2枚めくる。ようやくこの部屋の5月が終わった。

 深夜3時からW杯を観た。ハーフタイムでコンビニにビールを買いに行ったのが4時くらいだったんだけど、その時間はコンビニの空気がしゃっきりしていてとても良かった。あのしゃっきり感の正体はなんだったんだろう。応援していたポルトガルは敗れた。

 昼に起き、人生で初めてサバの水煮缶を食べたらしょっぱかった。びっくりした(12時間ぶり)。真水で煮たサバじゃないのか。ラーメンだったら醤油ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメンとなるところが、サバだと醤油煮、味噌煮、水煮になるのは変じゃないか。水ラーメンは全然おいしそうじゃないけど。


7月2日(月)

 7月最初の平日。

 暑かった。暑いのが苦手なので早くどうにかなってほしい。寒さについてはがんばりますから。暑さだけはどうか早くどうにかなってください。暑いのは本当に嫌です。

 カフェの店員さんへ。滞在の意志を一口分残したコーヒーで表してごめんなさい。閉店15分前には店を出ることで良客ぶろうとしてごめんなさい。また来ます。


7月3日(火)

 髪を切るのが嫌いというか、美容室という場所が苦手だ。親切にされればされるほど困ってしまう。気に入った気がした美容室も、数回行くとこちらがなにと言わなくても「最近あれどうです」なんて持ち前のコミュニケーション能力を遺憾なく発揮してくるので、かえってまごまごする。覚えられたら終わりだ。

 とはいえいい加減見苦しくなってきたので、ようやく美容室を予約した。初めて行くところだ。ところで私が普段持ち歩くリュックサックはタウンユースの型に漏れ、やたら大きく重たいんだけど、それは読むか読まないか分からない分厚い本を何冊も詰め込んでいるせいだ。美容室となると大抵お荷物をお預かられてしまうので、美容室に来るのにこんなに重い荷物を持ってきやがって気味の悪い奴、帰れ、二度と来るな、引っ越せ、と思われるのが怖くて、泣く泣く2冊に厳選して出かけた。

 美容室に行ったら、ニット帽の上にサングラスを乗せた美容師さんが出てきてぎょっとした。季節を欲張るな。どういう感じにしますかと聞かれ、短くしてください、あと速く乾くと嬉しいですと答えたら、苦笑しながら『ゆるふわ愛されヘアカタログ』を差し出されたのでまたぎょっとした。ゆるふわ愛されヘア(ver.速乾)になりました。安い代わりにシャンプーブローはなく、ばさばさ頭を振ったらわんわん毛が降ってきた。

 天気予報を見るのが面倒くさくて、出かけてから町の人たちが傘をやたら持ち歩いているので今日は雨が降るんだなと分かるんだけど、分かったところで傘は持ってきていない。覚悟を決めるだけだ。

 ビアガーデンに行く日にちを決めている人たちがいた。外でビールが飲みたい。

 久しぶりにラーメンを食べた。にんにくを3かけ絞った。横に座った大学生らしき男性2人組はフジロック帰りみたいな格好をしていた。バリカタ頼みそうだな、と思って見ていたら、2人ともバリカタを頼んだ。一口食べて「これこれ」って言ってた。

 雨が降る前に帰れた。風が強くて、植木鉢がひっくり返っていた。

 ラジオを聴きながらお風呂に入った。髪はすぐ乾いたんだけど、左右の長さがばらばらだ。狙ってそういう感じにしたと思われたら恥ずかしい。


7月4日(水)

 台風は寝ている間にほとんど過ぎたのか、起きたら絞りかすみたいな雨と風が残っているだけだった。

 岡山PEPPERLANDにライブを観に行った。ながいひるTシャツ、初おろし。初めて観るバンドが多かったんだけどかっこよかった。外でビールを飲んだ。

 シャワーを浴びながらチャットモンチーの『サラバ青春』を歌って寝た。


7月5日(木)

 (この段落は夢オチです)歯医者さんに殴られ、気絶している間に親知らずを抜かれていた。無痛だったことに感動して「最近の歯科医院は抜歯も無痛! 気絶している間に事が済む!」とツイートしたところで目が覚めた。

 (ここから現実パートです)歯科医院に行った。ナめられたらいけないので、朝起きてシャワーを浴び念入りに体を洗い、洗い流さないトリートメント(いい匂いがするやつ)を1プッシュ多めに付けた。歯医者さんはすぐナめるから……。

 歯科医院では、恥ずかしいところをたくさん見られた。レントゲンまで撮られた。口をずっと開けさせられて、大きい音がする唾液とかを吸う機械みたいなので、ずぽっと口の内側とか、舌とか吸われて、もう本当に恥ずかしかった。あと、口の開閉のタイミングが分からなくて、大体いつもひと段落した時に「楽にしてくださいね」と言ってくれるんだけど、それを言われなくて口内への諸々の侵入が途絶えた時に顎が疲れたのでスゥ……と口を閉じてみたんだけど、完全に閉めきる勇気もなく、半開きで過ごした。間抜けだった。ひどいよ。歯医者さんの恥ずかしいところも見せてよ。前略プロフとか見せてよ。私ばっかり……。ひどいよ……。すっかりぐったりしてお会計をしようと思ったら「初診なので4,400円です」と言われた。3,800円しか持っていなかった。恥じらいの涙は雨が流してくれるサ、と思いながらコンビニでお金を下ろした。また来週行きます。

 その後、友達と合流。昼ごはんにパスタを食べた。箸で。お互いに箸の使い方がなっておらず「パスタはフォークだね」と言いながら食べた。おいしかったけど、何で箸がデフォルトなんだ? ムード作り? 腹ごしらえを済ませて映画を観た。松岡茉優さんが松岡茉優さんだと分からなかった(褒めてる)。エッチなシーンが、過激じゃないのに大変エッチだった。後でTwitterを見たら「あの程度でエロいとか言ってる奴w」みたいなことを書いてる人がいた。この人とは絶対に友達にならない。

 映画の後、居酒屋に行った。見た目にこだわっているお酒を久しぶりに飲んだ。近頃は酔えればオッケーという飲み方しかしていなかったので……。料理も全部きれいでおいしかったんだけど、きれい過ぎる味付けに妙に不安になってしまった。上品な味付けの店で「サービスのペヤングです」とか言って食後にペヤング差し出されたらめちゃくちゃ最高だし、すぐ潰れるだろうな。

 傘もカッパもバスも電車もあるのに、何にも頼らず自転車を漕いだ。思ったより濡れなかった。物足りなくて服を着たままお風呂に入ってみた(汚ねえなと思った人は社会に毒されていますよ)。着衣水泳を思い出した。これはこれで楽しいんだけど、前みたいに土砂降りの雨で何もかもびしょ濡れになった時の感動とは違うなあ、と思いながら湯船の中で靴下とパンツを脱いでみた瞬間、何でプライベートな場でノーパン入浴なんかしてるんだろう、という気持ちになった。ん? でも、みんなだっていつもノーパンでお風呂に入るよな。パンツ以外を着ているからこそ、ノーパンでいられるのか。ふむ。ノーパンって面白い言葉。


7月6日(金)

 家に液体しかなかったけど、固形物が欲しくなって、コーヒー牛乳に片栗粉を入れてレンジで温めてみた(この世のすべての液体は片栗粉を入れて熱すると固形物になるから)。どろどろの片栗粉風味のコーヒー牛乳になった。本当にまずかった。スーパーでパンを買った。おいしかった。水とどん兵衛も多めに買った。水とどん兵衛があれば大体のことは大丈夫だから。

 大雨で避難指示が出ている地域もたくさんある。交通もいつも通りには動けない(動くべきでもない)。週末ということもあって各地でいろいろなイベントがあると思う、開催する側の苦労を知らないことを自覚した上で言うけど、安全と秤にかけなきゃいけないようなら全部中止にしていいと思う。生活は雨が止んでも続いていく。


7月7日(土)

 サイレンの音を聞きながら寝て、昼過ぎに起きた。安否の確認をしたりされたりした。

 夜に1人で散歩した。岡山県庁は夜遅くまで煌々と明かりが灯っていて、町では酔っ払いがはしゃいでいて、口元の緩みきった男性が女性の肩を抱いてホテルに入っていって、駅では新幹線の運行が再開していた。商店街の楽器屋さんでは演奏会をしていて、角で盗み聞きをしながらビールを飲んだ。スーパーでお酒を買って家に帰った。帰る途中にまた岡山の一部地域に避難指示が発令された。インターネットをしながらビールを飲んだ。水がなかなか引かない。合ってるとか、合ってないとかはあるかもしれないけど、自分の生活をやっていくしかない。

 ゲームのプレイ動画を観ていたら朝になっていた。泥酔しながら寝た。

共感を得られるかどうか分からないこと1選

人と映画を観に行くとエンドロールに入った途端「終わった後の第一声どうしよう」という焦りが生じる

 どうですか?(1選なのでこれで終わり)

読書ゆる記録(ネタバレ有り)

人間失格』 - 太宰治

 男がとことん道をそれて自覚する真理めいたもの、例えば「世間というのは、君じゃないか」「世の中の人間にだって、果して、『愛』の才能があるのかどうか、たいへん疑問に思っています」等々、それ自体はなんてことないように思えるので、まるで彼に同調したいような気持ちになるけれど、私は太宰治にはなれないよな(当たり前だ)。翳りを宿した才能に触れる時、その苦難を嗅ぎ取りつつもどうしても憧れてしまう。松葉杖をつきたかった気持ちに似ているかも。

人間失格 (角川文庫)

人間失格 (角川文庫)

夫婦茶碗』 - 町田康

 町田康さんの小説を初めて読んだことをある人に伝えたら「卵の取り出し方にもこだわる人」という噂を聞いて、なんだそのいかにもなこだわりは、と思って探してたどり着いた作品。卵の取り出し方でそんなに文を書くのかよ、という驚愕。あああ。あああ。あああああ、と思いながら本を閉じた。

夫婦茶碗 (新潮文庫)

夫婦茶碗 (新潮文庫)

『入門! 論理学』 - 野矢茂樹

 タテ書きの論理学入門書。本の内容もなんだけど、野矢茂樹さんは、とっかかりのところで本の正体を明かしてくれるのでそれが好きなのかなと思う。哲学に通ずるところもあって面白かった。論理学は日本語以前の言語。否定って実はすごく難しい。半分くらいしか読んでない。また来週。

入門!論理学 (中公新書)

入門!論理学 (中公新書)

『心という難問』 - 野矢茂樹

 救いを求めて哲学に走るのは予後が悪そうだけど、野矢茂樹さんの哲学は明るくていい。はじめに「哲学用語も哲学の学説も何ひとつ知らなくとも、私とともに進んでいけるはずである」という記述があって、まさにその通り一つひとつ丁寧に……書いているのですが……まだ最初の方しか読んでない。また来週。

心という難問 空間・身体・意味

心という難問 空間・身体・意味

週報最終号 vol.1

 日曜日の夜に更新していきたい需要度外視の週報です。内容は日記とかなんでも。テスト前に部屋の掃除をする要領で、人生の行き詰まりに際してブログ更新に精を出しています。毎週最終号のつもりでがんばります。本当にがんばらないといけないことは他にたくさんあるのですが……。本当にたくさん、あるのですが……。

日記(6/24~6/30)

6/24(日)

 話は土曜日の夜にさかのぼる。怪しげな楽器がひしめき合う狭い部屋、その隙間で大人3人が上機嫌に酔っ払っていた。日付が変わってもなお酔いは加速、その勢いに乗って外へ飛び出し、上ったり、むしったり、すべったり、転がったりと散々に遊んだ。名残惜しさを振り切って解散した頃にはほとんど朝のような時間にーーという話を、その場にいた3人ともが、その場にいなかった古本屋さんにそれぞれ好き好きの時間に報告していた。曰く「バイトリーダーみたい」と。


6/25(月)

 サイゼリヤで困り果てていた。食べたいものが見つからないのである。お腹は空いているけれど、大好きなイカの墨入りスパゲッティを見てもなぜだか心が踊らない。散々悩んで、ほうれん草のソテーと真イカのパプリカソースを注文した。食事が揃って伝票を置く時、いつもなら「ご注文は以上でお揃いでしょうか」と聞く店員さんがこの時は何も言わなかった。こういう些細なルーティーンの崩れが気になってしまうのでまごまごしながら食べた(店員さんに不満がある訳ではない)。

 まごまごの余波か、駐輪場で横に停めてあった自転車を倒してしまった。でも、ひとつ文句を言うと、スタンドのストッパーをかけていなかったんだよな。ストッパーをかけていない自転車はよく見る(そして倒す)んだけど、面倒くさいんだろうか? うっかり忘れているんだろうか? 何はともあれごめんなさいの気持ちで自転車を起こし、どうなんですかの気持ちでストッパーをかけておいた。持ち主が非ストッパーの常習者なら、自転車を出そうとする時にストッパーがかかっていることに気付くはず。そして私に謝罪するのだ、「自転車を倒させてしまってごめんなさい」と。私は応える。「今後は気を付けるように」


6/26(火)

 涼を求めて図書館に行ったら、まだ冷房がついていなかった。公共施設っぽい温度だった。じわじわと汗ばみながら本を読んだ。

 帰宅後、暑さに耐えきれず冷房試運転の儀を執り行った。26度だと涼しすぎて、27度だとすこし暑い。27度に設定してサーキュレーターを回すといい感じ。友達と電話をしたんだけど、冷房とサーキュレーターとアロマディフューザーを一気に稼働させていたのでうるさかったかもしれない。試運転をやめられないまま寝てしまった。


6/27(水)

 佐川急便からの電話で目が覚めた。注文していたながいひるTシャツが届いたのである。受け取りついでにポストを開けたらうれしいものも届いていた。るんるんだ。さっそく開封しようと思ったんだけど、なんだか急に眠くなってしまい、袋を抱きしめたまま床で寝た。

 昼になってようやく本覚醒。Tシャツを着てみた。やばい。やばいぞ。好んで購入したので当然Tシャツ自体はとてもかわいいんだけど、どうにも主張が強い。これを着て町を歩いている自分を想像すると面白い。今度ながいひるに着ていこう。オフィシャルグッズだ。

 昼過ぎに電話。心臓がいやな脈の打ち方をした。


6/28(木)

 スーパーで買い物を済ませ、駐輪場に向かってぎょっとした。私の自転車の周りで、大学生らしき男女6名が談笑しているのである。休み時間にトイレから戻ると私の席にギャルが座っていた時のあの感じを思い出して背筋が冷える。今週は自転車運が最悪だ! それでも勇気を振り絞り、スススと男女の間に割って入る。不審者の侵入に男女の会話が止まる。気まずい。さっさと退散したいのに、自転車を出そうにも、隣の自転車が寄りすぎていて叶わない。仕方なく隣の自転車をややずらす。多分、そのグループの誰かのものだったのだろう、さらに妙な空気になった。やっと自分の自転車を出す。先ほど隣の自転車を寄せたせいで生じてしまった不自然な間隔を正すべく、一旦自分の自転車を置いて、その自転車を適切な位置に戻す。全員が無言。無限にも感じられる時間。顔を覚えられては大変だとうつむいたまま退散。私がいなくなった後で、私の悪口を言うんだろうか。妖怪自転車整理とか。


6/29(金)

 数年ぶりに大病院へ。施設が清潔で驚いた。地元の陰気な大病院とは全く雰囲気が違う。大して待つこともなく受診。前は1時間以上待ったような気がするんだけど、今や病院は待つところではないのかしら。担当医の後ろに研修中と思しき男の子が居て、私が何か話すたびにうんうんと深く頷いていた。そうするしかないよな、と思った。

 帰る途中にすごい雨が降った。たまには濡れるのもいいかとそのまま自転車を漕いでいたら、雨脚は落ち着くどころか激しさを増す一方で、ほとんど殴られているみたいになった。泣き虫も強がりもきれい好きも汗っかきも全部ないまぜにするやさしい殴打。パンツまで濡れた。気付いたんだけど、パンツって、濡れ始めはやばい気がするんだけど、ぐしゃぐしゃに濡れてしまったら本当にどうでもよくなる。おしっこ漏らしても変わらなさそう。ばれないだろうし。

 家に着いた頃にはすっかりずぶ濡れで、袖どころか全身をぞうきんにして絞れそうだった。歩くたび靴底にたまった水をぐちゅぐちゅと踏みつぶす感覚が懐かしい。部屋の前ではカナブンが裏返しになっていた。つついてもひっくり返しても動かない。死んでいた。死の手触りはいつも乾いている。

 部屋に入ってすぐ何もかもを脱ぎ「ハライチのターン」を聴きながらお風呂に入った。張りすぎたお湯がざぶんと溢れた。


6/30(土)

 食べたいものが周期的に変わる。すこし前まではずっとたまご焼きを食べていたけど、たまご焼きの周期が終わった。今はコーヒー牛乳だ。ネスカフェの無糖コーヒー、安い分ストレートだとちょっと厳しいけど、牛乳と混ぜるとちょうどいい。飲みすぎるのですぐお腹が痛くなる。

 『嘘喰い』という漫画が7月4日まで無料公開ということで、ずっと読んでいた。面白い。治安の悪い漫画は好きだ。頭を使わないといけないところも多いんだろうけど、難しいところを都合よく読み飛ばしていたら訳が分からなくなって、結局また前のところから読み返すというのを何回もした。

youngjump.jp

 マウスの調子が悪くなっていたので新しいものを買った。

なんでもあり

パフェと宇宙

 6月28日は「パフェの日」なるものだったらしく、Twitterにもパフェの画像が次々と上げられていた。

 見る分にはきれいなんだけど、食用のパフェが怖い。いっぺんにいろんな味やら食感やらがして、頭が混乱する。その上、アタックの仕方によってはアイスがでろでろに溶けたり、いろんなものがぐちゃぐちゃになったりするのでそれも怖い。食べ方がへたくそなのが悪いんだけど。

 そしてなぜか高確率で下層部に敷いてあるコーンフレーク。なんの業を背負ってあんなところに押し込まれているのか分からないけれど、コーンフレークに辿りつく頃にはいろんなスイーツ汁に浸食されてぐずぐずになってしまっている。ずっとパフェのことを支えていた名脇役だというのに、あまりにも悲しい結末だ。

 そもそもなぜ6月28日がパフェの日なのかを調べてみると、1950年6月28日に巨人の藤本英雄投手が日本プロ野球史上初のパーフェクトゲームを達成したことに由来するらしい。えーっ、野球だったのか。そもそもパフェが「パーフェクト」に因んでいるということを初めて知った。「贅沢な名前」だ。

 とはいえそのビジュアルの良さについては認めざるを得ず、自分では食べないけれど人に食べさせたいものランキングでは堂々の1位だ(2位はない)。おいしそうに食べなくていいから、もくもくと食べてほしい。

 ところでパフェが好きな人って、宇宙旅行に前向きなんじゃないかなと思う。私はパフェも怖いし宇宙旅行も怖い。関係ないでしょうか。どうなんですか。

情報量の多い食べ物メモ

 パフェ、パエリア、シーザーサラダ、肉じゃが、筑前煮、ちらし寿司、酢豚、八宝菜、チンジャオロース、あんかけチャーハン、ジャガイモ入りカレー、カレーもスパイシーでお米にも色や香りがついているカレー、なにかしらのピザ。

読書ゆる記録

『月刊カス』 - マッシュ星川

 岡山でいろいろ(ラップとか)やってるマッシュ星川さんの漫画とエッセイ。自虐的な「カス」ではなく、どこか誇らしげな「カス」。カスのいいとこどり。ゆるいのに中身はなかなか味わい深くて、毎号うっかり切なくなってしまう。マッシュ星川定例会というイベントのおまけ。古本ながいひるでも買えます。

『麦ふみクーツェ』 - いしいしんじ

 絵本のページをめくっていた頃の気持ちを思い出せる小説。へんてこにしか出せないすてきな音。やわらかでしたたかな黄金色。疲れている人とか、疲れていない人に読んでほしい。まあまあ厚い。

麦ふみクーツェ (新潮文庫)

麦ふみクーツェ (新潮文庫)

『整形前夜』 - 穂村弘

 エッセイ集。ハトの交尾の記事に友達が「少しテンションの高い穂村弘」というリプライを付けてくれて、どんなものかと図書館で借りた。わくわくしながら読んだ。格が違った。そりゃそうか。世の中、すごい人だらけだ。「鬼才」が光る文章は妬いちゃうくらいで、取り込んだら脳みそで膨らむタイプの文章だったのでつまみ食い程度で返却した。また読む。

整形前夜 (講談社文庫)

整形前夜 (講談社文庫)

『哲学な日々ー考えさせない時代に抗して』 - 野矢茂樹

 哲学者野矢茂樹さんのエッセイ集。野矢茂樹さんがなんとも言えずたまらなくて、最近よく読んでいる。哲学という、一見さんお断りっぽい分野の入り口をやわらかくほぐしてくれるやさしい文体がいい。メモ:「哲学は実技科目」「光は色が存在するための条件」「文系・理系/現実系・妄想系/妄想系情緒派(文学向き)・妄想系論理派(哲学向き)」

哲学な日々 考えさせない時代に抗して

哲学な日々 考えさせない時代に抗して

『<ルポ>かわいい! 竹久夢二からキティちゃんまで』 - 青栁絵理子

私が考える「かわいい」の反対語は、「醜い」でも「美しい」でもなく「戦争」だ。少女たちがひそかにかわいい物を愛でる行為そのものが、非暴力の「非戦の闘い」だったのだ。(16頁)

 最近、泣きのポイントが「かわいい」になっている。思わず泣いてしまった。自分でもよく分からない。かわいいの反対語が戦争って、ぐっときちゃった。

〈ルポ〉かわいい!  竹久夢二からキティちゃんまで

〈ルポ〉かわいい! 竹久夢二からキティちゃんまで

あのハト、これから交尾するな

 あまりエッチな話が得意ではない。

 この期(どの期?)に及んでカマトトぶりたい訳ではないが、エッチな話の盛り上がり方が今ひとつ分からないし、人前でする話でもないと思っている。ライブでも歌の中にエッチな単語が登場すると脳内が「エッチだ!!!」の一点張りになって歌どころではなくなるので、いつか某超歌手のライブで「エロいことしよう」の合唱モードになった時はあばばばばばば……。

 最近だとTwitterで「お互いこれからエッチするなと察している男女が和やかに食事するのエッチ」というような旨のツイートが流れてきて、◯◯さんと他3人がいいねしていますなんて表示が添えられていたものだから、けしからんと呟きながら他3人をしっかりチェックした次第である。

 しかしながら私にもちょっぴりエッチな才能がある。これから交尾をするハトを見抜くことができるのだ。

 こちらのツイートをご覧いただきたい。



 後に調べて分かったのだが、これは「ハト跳び」でもなんでもない。交尾だ。そしてさらに調べたところ、ハトは交尾の前に前戯よろしくやたらイチャイチャするらしい。具体的には首と首を擦り付けあったり、かなり激しめにくちづけを交わしたりするのだそうだ。すっかりハトの交尾について明るくなった私は、町中のハトを、これから交尾をするかどうかという目で見るようになってしまった。

 いつか友達と鴨川沿いを歩いていた時のこと。私たちは将来について語り合っていた。この先一体どうするのか、どうやって生きていくつもりなのか。真面目に私の心配をしてくれる友達の話を、私とて真剣に聞いていたのだが、視界の端に見つけてしまったのである。前戯中のハトを。

「待って。あのハト、これから交尾する」

 私は友達の話を止め、ハトに注目させる。私たちが見守る中、ハトたちはちゅっちゅとアツいくちづけを交わし、オスがメスに飛び乗った。交尾である。一瞬のうちに事を済ますとハトたちはまた付かず離れずの距離を保ちながら散歩を楽しむ。

「見た? あれ交尾!」

「うん……」

「ハトはよく交尾するんだよ。オスがメスの上に乗っかって、総排出口っていうなんでもかんでも出てくる穴を擦りつけるんだよ。ハトは交尾の前にいちゃいちゃするから、これから交尾するハトは簡単に見分けることができるんだよ」

「へー……」

 今思うとあの相槌の感じ、友達はそんなにハトの交尾に興味を持っていなかったかもしれない。その後も私は周りのハトたちを観察しながら、あれは交尾する、あれは交尾しないと鑑定士気取りではしゃいでいた。私の見立ては的中し、その後も1組のアベックが交尾に至った。

「あのハトは交尾しない。あれもしない。あれも」

ユニクロ行かへん? 仕事着欲しいねん」

「あ、うん」

 私たちは立ち上がってユニクロに向かった。私は後ろ髪を引かれるようにハトたちを振り返り振り返り退場する。あれはしない。あれもしない。あれも。

 友達がユニクロでシャツを見ている間、私は特に買うものもないのでフロアをうろうろしていた。たまたまルームウェアのコーナーに足を踏み入れた時、若い男女がなにやら楽しそうにお互いのルームウェアを選び合っているところに出くわした。私は思わず息を飲む。

 さ、さては、このヒトたち、これから……!

捕まえた愛は片足で逃げた

 昼下がりに訪ねた路地裏の喫茶店は、町中の退屈が一斉に押しかけたみたいにがらんどうだった。そのくせやたらにぎやかなのは、ジャズとワイドショーという混じり合えない2つの音がぶつかっているせいらしい。好きな席に座るよう促され、テレビからなるべく遠いテーブル席に腰かけた。お冷が運ばれてきたタイミングでアイスコーヒーを注文する。

 ひと息ついて、ゆっくり店内を見回してみる。テーブル代わりのゲーム筐体、臙脂の革が張られたソファ、寛がせる気概がむんむん伝わってくる本棚。壁掛けのランプは店の薄暗さを守るように淡くやさしく光っていて、ただひとつワイドショーがやかましいけれど、それを差し引いたってすてきな喫茶店だ。

「お待たせしました」

 店主の声で、丸まっていた背中をよそゆき仕様にぴんと伸ばす。コースター、アイスコーヒー、ストロー、ミルク、それからシロップが静かに置かれた。ミルクとシロップはいつも使わないので最初に言っておけばよかったなといつも思うんだけど、後の祭りである。

「ごゆっくりどうぞ」

 お言葉に甘えますの意で会釈。店主がくるりと背を向けたので、よそゆきモードを解除して、また背中を丸くした。

 アイスコーヒーにストローを差すと、ちょうど逆立ちしたからかさおばけのような格好になった。下駄にあたる部分をくわえ、ひと口飲んでびっくり、なんと麦茶の味がしたのである。それも、いつかの夏が始まりかけたあの日、狭い教室から逃げ出してひとり家に帰った夕方に冷蔵庫から取り出して飲んだ麦茶の味。まさかそんなはずはないと気を取り直してふた口目。やっぱり気のせいだった。ちゃんとアイスコーヒーだ。おいしいアイスコーヒー。当たり前だ、アイスコーヒーを注文したんだから。鼻に抜ける香ばしさに、あの日の記憶を揺り起こされただけだった。なんて間抜けな舌だろう。

 待てよ、まさかこれが愛なのか!



 なぜ急に愛が出てきたのかというと、話はすこし前の夜にさかのぼる。その晩、私を含めた酔っぱらいたちは卓を囲み、愛について語り合っていた。なにかのきっかけで「愛と性欲を見誤ってはいけない」という発言が飛び出したので、私がそれに食いついたのである。愛という大きなかたまりをほどけばきっと性欲だって見つかるのに、見誤るとはどういうことなのか。愛とは語るべくもない尊いものなのか。では人々が当たり前のように、さも愛が愛であるかのように信じ込んで没頭しているものの正体はなんなのか(言い訳だけど、そのとき私はしっかり酔っぱらっていた)。

 別の酔っぱらいが皿を愛に見立てて語り始めた。「愛がこれだったとして、」皿の輪郭を触れずになぞる。酔っぱらいの人差し指が描く愛の軌跡を目で追いかける。「性欲はこの辺にあるんじゃないか」続けて酔っぱらいは、皿の端っこに小さな性欲丸(ひどい名前だ)を描いた。性欲丸は、愛から半身ほどはみ出ていた。「じゃあ、ここには何があるんですか」性欲による侵略を免れた愛を指して私が尋ねる(繰り返すけど、そのとき私はしっかり酔っぱらっていた)。

 その後もやいやい話をして、結局、どうだったんだっけ。理解し合うのは難しいね、みたいな収束の仕方をしたんだっけ。なし崩し的に次の話題に移ったんだっけ。時間は24時を回っていたと思う。



 とにかくそんなこともあって、朝からずっと頭のどこかに愛という正体不明のおばけがぴょこぴょこと飛び回っていたんだけど、とうとうそいつを捕まえた気になった。つまり、つまり愛とはアイスコーヒーのことで、性欲は香ばしさのことなんじゃないかと思った。ご指導いただくまでもなく無茶苦茶で訳が分からないということ、このブログを書いている今なら分かるんだけど、そのときは本当にそう思ったのだ。氷がとけたアイスコーヒーは色を薄め、見た目にも麦茶そっくりになっていた。「愛の経年劣化だ!」私は打ちひしがれた。

 しかし困ったことに、薄くなりすぎたそれを飲んでみると、既にアイスコーヒーではなくなっていたのである。強いていうなら香ばしい水。なんてことだ。性欲だけを残して、愛は片足で飛びはねどこかに逃げてしまったらしい。しまった。捨てられた。なんということだろう、腹いせにつついた氷までもが、からからと私をあざ笑うのである。圧倒的な失恋だ。



私のために声をひそめないで

 某カフェチェーンの2階席。平日の昼下がりということもあって人気はなく、私の他に、女子大学生の2人組が居るだけだった。仲の良いらしい2人はおしゃべりに花を咲かせていたのだが、その声は店内BGMとともに音楽として空気に溶けていくばかりで、特に内容を気にすることもなかった。

 2人が声をひそめるまでは。

「……それでね、その男の子は童貞だったらしくて」

 ブーーーッ!!!(コーヒーを噴き出す音)(実際にはコーヒーを噴き出してはおらず、なんならこのタイミングでコーヒーを口に運ぶこともなく、さらにさらに注文したのはコーヒーではなくアイスカフェラテの氷少なめ)

 なぜ突然声をひそめたのか。今までどおり話してくれればいいものを、こちらとてモブに徹しきれぬ人間、声をひそめられると耳をそばだててしまうというもの。いや、ひそめられている以上、耳をそばだてるのは彼女たちを裏切ることになってしまうのだろうか。恐らくこの場に私がいなければその2人も声をひそめることなくイカガな話をしていたのだろうが、私がいることを気にしてくれたのだろう。急に申し訳ない気持ちになった。どうしよう、退店しようか。しかしこのタイミングで退店したら、かえって申し訳なく思わせてしまうだろうか。

 いや待てよ。

 私だってお金を払って注文したからこそここに寛いでいるのであって、私がここにいることにはなんの問題もないはずである。だめだだめだ、惑わされるな。2人が声をひそめたので図らずとも他者の中の自己のあり方に戸惑ってしまった。話の内容はともかくとして、声をひそめられたことに私は困惑しているのである。

 別にその話をやめろとは言わない。あなた方も私も正規の料金を払って滞在しているんだから、気持ちよく過ごすために、お互い気兼ねなくやりましょうやと言いたいのである。恐らく2人は、イカガな話を公共の場ですることについて後ろめたさを感じているというアピールをするために声をひそめるというポーズをとったのであろうが、そんなものは配慮でもなんでもない。配慮するというのなら、そもそも声量を絞らなくてはいけないような話をこんな場でするべきではないのである。二つに一つ。堂々とイカガな話をするか、今すぐその話をやめるかだ。

 とは言えズカズカと歩み寄って「あの、その話、声ひそめずにやってもらえますか」などと言おうものなら不愉快どころではない、事案待ったなしである。そんな危険を冒すほどのことでもない。ここは穏便に済ませよう。私はリュックからカナル型イヤホンを引っ張り出し深く深く耳にはめ込んで、『寿司屋』のサウンドを再生する。聴覚に強引に引きずられるがままに、意識を活気ある寿司屋の音に集中させる。「へい、中トロお待ち!」ズズッ(アイスカフェラテを飲む音)! めでたしめでたし!