おへそのおなか


あのハト、これから交尾するな

 あまりエッチな話が得意ではない。

 この期(どの期?)に及んでカマトトぶりたい訳ではないが、エッチな話の盛り上がり方が今ひとつ分からないし、人前でする話でもないと思っている。ライブでも歌の中にエッチな単語が登場すると脳内が「エッチだ!!!」の一点張りになって歌どころではなくなるので、いつか某超歌手のライブで「エロいことしよう」の合唱モードになった時はあばばばばばば……。

 最近だとTwitterで「お互いこれからエッチするなと察している男女が和やかに食事するのエッチ」というような旨のツイートが流れてきて、◯◯さんと他3人がいいねしていますなんて表示が添えられていたものだから、けしからんと呟きながら他3人をしっかりチェックした次第である。

 しかしながら私にもちょっぴりエッチな才能がある。これから交尾をするハトを見抜くことができるのだ。

 こちらのツイートをご覧いただきたい。



 後に調べて分かったのだが、これは「ハト跳び」でもなんでもない。交尾だ。そしてさらに調べたところ、ハトは交尾の前に前戯よろしくやたらイチャイチャするらしい。具体的には首と首を擦り付けあったり、かなり激しめにくちづけを交わしたりするのだそうだ。すっかりハトの交尾について明るくなった私は、町中のハトを、これから交尾をするかどうかという目で見るようになってしまった。

 いつか友達と鴨川沿いを歩いていた時のこと。私たちは将来について語り合っていた。この先一体どうするのか、どうやって生きていくつもりなのか。真面目に私の心配をしてくれる友達の話を、私とて真剣に聞いていたのだが、視界の端に見つけてしまったのである。前戯中のハトを。

「待って。あのハト、これから交尾する」

 私は友達の話を止め、ハトに注目させる。私たちが見守る中、ハトたちはちゅっちゅとアツいくちづけを交わし、オスがメスに飛び乗った。交尾である。一瞬のうちに事を済ますとハトたちはまた付かず離れずの距離を保ちながら散歩を楽しむ。

「見た? あれ交尾!」

「うん……」

「ハトはよく交尾するんだよ。オスがメスの上に乗っかって、総排出口っていうなんでもかんでも出てくる穴を擦りつけるんだよ。ハトは交尾の前にいちゃいちゃするから、これから交尾するハトは簡単に見分けることができるんだよ」

「へー……」

 今思うとあの相槌の感じ、友達はそんなにハトの交尾に興味を持っていなかったかもしれない。その後も私は周りのハトたちを観察しながら、あれは交尾する、あれは交尾しないと鑑定士気取りではしゃいでいた。私の見立ては的中し、その後も1組のアベックが交尾に至った。

「あのハトは交尾しない。あれもしない。あれも」

ユニクロ行かへん? 仕事着欲しいねん」

「あ、うん」

 私たちは立ち上がってユニクロに向かった。私は後ろ髪を引かれるようにハトたちを振り返り振り返り退場する。あれはしない。あれもしない。あれも。

 友達がユニクロでシャツを見ている間、私は特に買うものもないのでフロアをうろうろしていた。たまたまルームウェアのコーナーに足を踏み入れた時、若い男女がなにやら楽しそうにお互いのルームウェアを選び合っているところに出くわした。私は思わず息を飲む。

 さ、さては、このヒトたち、これから……!