おへそのおなか


昼下がりの熟女は透けブラニットで町をゆく

 私はバスに揺られていた。平日の昼下がりということもあって車内は空いており、後ろの方の席に座って、窓から射すぽかぽかとした陽気に眠気を誘われていたのだが、あるバス停でちょっとギョッとするような格好をした熟女が乗ってきたので一気に目が覚めた。

 透けブラニット。

 熟女は、透けブラニットだったのである。いや、もはや「透け」よりも「大胆見せ」と言った方が実態に即しているほどの透けっぷり。

 しかしこれがまた痴女という訳でもなさそうで、おそらく中に何か1枚着ることを想定して作られたのであろうざっくりし過ぎた編み目のニットの下に着けていたのは、いかにも機能性に特化しているラクダ色のブラジャーだったのである。そのブラジャー自体に欲情を煽ろうという意志はまったく汲み取れない。

 じゃあどうして!?

 私は混乱した。

 もしかすると熟女はおっちょこちょいで、うっかり中に1枚着るのを忘れてしまったのかしら。いや、でもそれはさすがに気付くだろ。あらなんかスースーするわね、ってなるだろ。とすると一枚上手の、生活感をともなわせるタイプのエロを狙った露出魔なのだろうか。そういえばいつか聴いた深夜ラジオでこんなトークをしていた、「熟女もののアダルトビデオを見た時、熟女の腕に輪ゴムがついていて、それが最高の抜きどころだった」と。そう思って見ると、途端にラクダ色のブラジャーがずいぶんと卑猥なものにも思えてくる。

 いやいや待て待て、これは駄目だぞ、本当にただうっかりしていただけかもしれないし、そもそもこの熟女はブラを透かすことについて特になんとも思っていないのかもしれない。そこに勝手にエロを見出すのは人として最低の行為なのではないか。こんな、いかにも人の良さそうな、自分の母親と同じくらいの年齢の女性に対して、私は何を考えているのだ。葛藤が始まる。駄目だ、考えたら負けだ、見るのをやめよう、考えるのをやめよう。そう思うのに、どうしても視界の端に熟女が入ってくる。空いている席があるというのにわざわざよく目立つ通路の真ん中に堂々と立っているのである。も、もうやめて~~~!!!

 さいわい熟女は次の停留所で降りたので、視界には映らなくなった。しかしあれから日が経った今でも、時々、鮮明に彼女の姿を思い出してしまう。あの日見た昼下がりの熟女の本当の目的は、一体何だったのだろう。