20240421_展示『靴に入った砂』、読書『鬱の本』(点滅社)など

 ケープは結構役に立つ。雨。歩いて本屋に行って、本を買って、歩いてDOUTORに行って、あ、そういえば日曜日のここのDOUTORって一人で本を読んでいる人が多い、心強い。

 DOUTORで点滅社の『鬱の本』を読む。見開き1ページに1000字程度の短い文章が載っている。それが84人分。いつ読んでもいいし、どこから読んでもいいし、まとまった時間やエネルギーがなくても読めるつくりがやさしい。

 適当に、開いたところから読んでみた。永井祐さんの『かけ算とわり算』(pp.118-119)と題された文章に出会う。これがとても良かった。

引き算のうちはよくてもかけ算とわり算でまずしくなっていく

 永井祐さんの短歌。すてきですね。短い文章なのであまり引用しないでおくのですが、とにかくこれを読んで、現在と未来を積と商で見積もって早々に絶望するのはやめよう、今ここを見つめようという気持ちになり、近所でやっている展示を見に行った。

 在廊していたマツモトマチさんともお話ができ、うれしくたのしかった。靴に入った砂。「旅から帰った後で、靴からさらさらと出てくるような、」そんな話を聞いて作品を眺める。他人の旅情、近くて遠くて、なんだかさみしくて、とてもきれいだった。今でもない、ここでもない、でもそのときたしかに今ここだったある瞬間。目で見たそのままじゃなくて、そのときの、その感じ。追及や断罪の手から逃れて、あー、ただ、良いなあとぼーっとする。そういう時間、そういう展示だった。作品の話や土地の話、本の話、旅の話もできてたのしかった。久しぶりに今日を生きた感じがした。日記を書こうと思った。

 雨の中を歩いて帰る。もうケープはすっかり役立たずになって、足もくたびれて、部屋に転がって、読みたい本がたくさんある。